ランニング経験者こそプライドを捨てて手に取る価値あり! 「ランニングをする前に読む本」(田中宏暁/福岡大学名誉教授)

20年前、学生アスリートランナーだった折田ちなむ氏。しかし、実は多くのアスリートは、走り方の基本をわかっていないとか、考えていないとか・・・(聞き手:本体、話し手:折田ちなむ)

(本体:以下「本」)
折田ちなむさんは、大学まで陸上競技部だったので、ランニングフォームなどを理論的かつ体系的に理解されているんですよね?

(折田:以下「折」)
そこが盲点なんですよ。実は、一部のトップアスリートや、勉強熱心な人以外、特に学生アスリートは理論的なトレーニングやランニングフォームなどについて、あまり理解していないと思うんです。

これはあくまで私の経験上でしかないので、間違っている・見識不足かもしれませんが、理論を学ばなくても基礎能力があれば結果がそこそこ出てしまうという背景や、若くて成長期だからハードなトレーニングをしたらぼちぼち成績が伸びる、という理由もあると思います。

本:
2020年代の現代のように、インターネット、スマホ、動画、SNSなどがなかった1990年代だと、情報も陸上専門誌くらいでしたよね。

折:
そこの情報量の差は大きいですよね。
今だとYouTubeなどで、ランニングフォーム、筋トレ、栄養補給、ストレッチ、シューズ、ケアのツールなどなど、すぐ調べられますものね。

本:
とはいえ、情報量が多いと「玉石混交」。YouTuberなどによって情報の質が怪しいものもありますよね。

折:
まさにそこは負の側面です。
ランニング系でも「〇〇駅伝出場者」や「プロランナー」、「〇〇マラソン優勝者」などの肩書で発信されている内容を見ても、あくまでその人の経験でしかないケースが多いように思います。

特に、「サブスリーするための〇つの法則!達成者はやっている」的な、ビジネス本チックなつり文句で煽る動画などは、まあ怪しいので見ないほうがいいですね。(エンタメと割り切りましょう)

本:
そこでいうと、「ランニングをする前に読む本」は大学の研究者で「スロージョギング」の第一人者である田中さんが書かれた信用できる書籍と言えそうですね。

折:
すごく良い内容です。
私はランニングを再開してから2年以上経過した2022年に手に取りましたが、もっと早く読むべきだったと、強く後悔しました。

実は、それまでにもAmazonやネット上、本屋さんで目にしていたのですが、「ふん、俺は大学まで陸上やってきた経験者だぜ。今さらランニング初心者向けのような本を読む必要はないぜ」と心の中で思ってしまっていた自分が恥ずかしいです。

ランニングをする前に読む本

本:
余計なプライド、というやつですね。

折:
自宅近所の本屋でたまたま目にして購入しました。その時、右ふくらはぎの外側を軽く肉離れして、走れなくなっていて。ハーフマラソンのレースに出る10日ほど前で、今回はDNS(Did Not Start)かなと諦めていました。

実は、「俺のレベルには必要ない本だ」と思って一度通り過ぎたんです。でも、藁をもすがる思いでした。

で、この本を読んで走り方を変えたら、不思議と痛みが出なくなったんです!”
さらにベストな体調ではなく、完走を目標に軽い気持ちで走ったのですが、ハーフマラソンをPB(パーソナルベスト)の1時間29分台で走ることができました。この本のお蔭です。

本:
どのように走り方を変えたのですか?

折:
書籍の第2章「走るための基礎知識(実践編)」にある、「フォアフット走法」を実践するように変えました。

そもそも、私がアスリートだった20年前は、「かかと着地(ヒールストライク)」が良しとされていたんです。
ところが、現代は厚底シューズの登場もあり、大迫傑選手に象徴されるような「フォアフット走法(前足部着地)」が全盛。

ただ、「フォアフット走法は、速い人・鍛えている人だけにおススメ」で、「初心者・中級者はミッドフット走法(足裏全体/中足部着地)が良い」と言われているんです。各種ランチューバーさんやランニング系整体師さんの動画を観まくった私は、そう理解していました。

本:
書籍では、初心者・中級者でもフォアフット走法を薦められていた、ということですね。

折:
「なるほど!」と目から鱗だったのは、フォアフット走法とかかと着地(ヒールストライク)で着地時の衝撃を比較すると、フォアフット走法の方が1/3程度少ないという言及でした。

書籍でも解説されていますが、ジャンプした後の着地は前足部(つま先近く)で行いますし、忍者の忍び足も「抜き差し差し足忍び足」でつま先で音を出さないようにしますよね。

私は20年以上前のランニング経験と、YouTubeで観た情報に縛られ、「自分のレベルだと、まだまだかかと着地やミッドフット走法からだな」と決めつけていたんです。

本:
やはり、authentic(オーセンティック/本物の)なことを学ぶべき、という貴重な教訓を得られたのですね。

折:
(authentic(オーセンティック)って、言いたいだけでしょ?)
イエス。それ以来、フォアフット走法を意識して、着地は母指球あたり、身体の真下。
無理に脚を前に出してストライドを稼ぐのではなく、書籍にもあるようにピッチを上げることも意識しながら、着地衝撃を減らして疲労も軽減するように、と考えています。

本:
この「ランニングをする前に読む本」という書籍名がズバリで、「走り出す前」の初心者の方が読むのがよさそうですね。

折:
同時に、「長年走っていても記録が伸びない」とか、「ケガと復帰を繰り返して継続的なトレーニングができない」といった悩みを抱えるランナーにも読んでいただきたいですね。

そして何より、私のように「昔はけっこうアスリート的にハードにやってたから、今さら基礎情報なんていりませんよ」と密かにランニングに余計な自負・自信をもっている方にお薦めしたいですね。

※体重とマラソンタイムの関係性を推定する数式も、「生理学的」と「物理学的」の2種類が説明されており、こちらも非常に有益です。

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この記事を書いた人

折田ちなむ (chinamu oruta)のアバター 折田ちなむ (chinamu oruta) オルタナティビスト/人事領域コンサルタント

◆オルタナティビスト:既存の価値観や視点ではなく、「alternative(オルタナティブ)=別の生き方や見方」を探す人。
◆スタンス:「Unique,Ironical,Nature」をモットーに、「それ、みんなもおかしいと思ってない?!」という本音をアンチテーゼとして発信。
◆「折田ちなむ」とは:世に溢れかえる、ありきたりで横並びのSEOコンテンツではない、本音を発信するためのペンネーム(オルタナティブ→おるた)。
◆プロフィール:40代男性/家族(妻、息子2人)/人事領域のフリーランスコンサルタント(人材業界約15年、国家資格キャリアコンサルタント、2018年独立)/東京・神田にオフィス/某国立大学大学院修了/関東在住/人口3万人の海辺の田舎町出身/市民ランナー(サブ3目標)/読書・書評系Podcast運営

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