不快な緊張と挑戦を乗り越える経験 Going my way.

市民ランナーとして1ランクアップを目指し、練習をレベルアップ中の折田ちなむ氏。2023年10月に開催されたMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)を観戦し、川内優輝選手と大迫選手の異なるタイプの「我が道」を進む姿に刺激を受けて語ります。(聞き手:本体、話し手:折田ちなむ)

目次

「心地よいこと」だけでは、先に進めない

ポイント練習(ワークアウト)の不快な緊張感

(本体:以下「本」)
今回は市民ランナー「折田ちなむ氏」としてのメッセージということですが、ビジネスや人生全般にも関わる内容になりそうですね。

(折田:以下「折」)
偉そうに人生訓を垂れる、そんなつもりはないのですが、けれど、シンプルに(2023年12月の)ハーフマラソンのレースでの目標タイムを決め、それに向けてバックキャスティング的にどういった練習を、どのタイミングでやるのかを設定していく中で感じたことを語っていきたいと思っています。

本:
週に1回はハードなポイント練習(ワークアウト)を入れるようにしているそうですね。

折:
仕事や家庭に影響が出すぎるので、学生時代のような高水準の練習はできませんが、例えば「400m×10本」や「1km×5本」のインターバルトレーニング、「90分以上のペース走」などをポイント練習として行っています。

で、正直、いち市民ランナーの練習やレースの結果なんてどうでもいいことなのですが、それでもポイント練習の前は、むちゃくちゃ緊張するんですよ。

本:
楽しみで走る市民ランナーなのに、緊張するほど追い込むんですか?

折:
もちろんプロや実業団選手とは比較にはなりませんが、それでも40代半ばの中年男性が心拍数180以上まで上げて、「ゼーハー、ゼーハー」して走りますから、しんどいんですよ。

「もし動けなくなるほど身体が辛くなったらどうしよう(いやだ)」とか、「なんでこんなハードな練習メニューやるって決めたんだろう・・・」とか、そういった緊張や不安、後悔が練習前に渦巻くんです。

小さな挑戦を越えた先の成長や爽快感

本:
とはいえ、決めた練習をやりきるんですよね?ハードなトレーニングを終えるといいことはあるんですか?1人で単純に走るだけなんて、苦行にしか思えないのですが。

折:
ほんと、トレーニングしているときも「俺、なんで1人でこんなきつい思いしてるんだろ?」と思うときは多々ありますよ。

けれど、自分でレースでの目標タイム(2023年内でハーフマラソンを1時間24~27分)を決め、それを達成するために必要な課題(絶対スピード、スピード持久力など)は明確なので、その課題解決に向かうアクションを取る。

私のような市民ランナーレベル(マラソンでサブ3.15~3.5)だと、ハードなトレーニングをすると、目に見えて走力が上がる、というわかりやすい成長実感を得られるのはいいところですね。
そして、こういった小さな挑戦、不快な緊張感を伴う行為をしないと、成長はしないのだと思います。

あとは、ハードなトレーニングを終えた後の解放感ややりきった充実感はけっこう爽快ですよ。

大迫傑選手、川内優輝選手のGoing my way.

大迫傑選手 サラリーマンではないプロとしてのGoing my way.

本:
パリ五輪のマラソン代表を決めるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)をご覧になって、特に二人の選手に刺激を受けたとのことですが、まずはカリスマ・大迫傑選手ですね。

折:
大迫傑選手は、大前提としてプロ・ランナーとしての生き様が独自で、他の実業団選手とは段違いでかっこいいですね。

残念ながら3位で、パリ五輪の代表権を得ることはできませんでしたが、大迫傑選手が出場するかしないかで、そのレースの注目度や価値が変わる存在だと思っています。

本:
端的に、大迫傑選手のどういったところがすごいのですか?

折:
生き様と言ったのは、単身でアメリカの世界トップクラスのランニングチームに挑戦し飛び込み、その中で一番練習ができない状態から、逃げずに着実に成果を出されている点です。

(市民ランナーの私が言うのは恐縮ですが)日本の実業団選手は、一般ビジネスの世界でいうと大手・有名企業に新卒で入るエリート・サラリーマンみたいなものです。
ある程度の給与や練習場所が用意され、決まった練習をこなして、チームとして決まった駅伝に出る。

マラソンや駅伝人気がある日本ならではですが、さながら「走ることに特化したサラリーマン」です。

大迫傑選手は、そのレールに一度乗りながらもその環境に甘んじなかった。ビジネスの世界でいうと、独立・起業して、最大市場のアメリカで戦い、恐らく日本の長距離界で唯一、世界のトップランナー達から知られている日本人選手になった形です。

※私は東京五輪前に出版された大迫傑選手の本まで買っちゃいました。

川内優輝選手 ブレなさすぎる信念のGoing my way.

本:
もうお一人の川内優輝選手は、今回のMGCで30キロ過ぎまで独走し、レースを盛り上げて4位入賞されたようですが、一般的には以前の「公務員ランナー」というイメージが強そうですね。

折:
市民ランナーならいざしらず、エリートレベルのマラソンを30代なかばで130回完走しているなんて、超人としか言いようがないと思います。

一般的にエリートレベルのマラソンは「年に2回が限界」と言われているんです。
しかし、川内優輝選手の場合は、ご自身のサイトを見ると、2009年からマラソンを開始して15年目なので単純計算で年間8~9回のフルマラソンを走らないと130回にならないのですが、2014年や2015年は年間で13回、つまり毎月1レース以上走っていらっしゃいます。

本:
毎月1回以上・・・。それも公務員として働きながらだった時期もあるんですよね?

折:
御本人も当時、「レースが練習代わり」と仰っていたと思いますが、レースをうまく使いながら、狙いのレースに仕上げていくスタイルだと思います。

そのスタイルが1つの戦略だと頭では理解できても、一般的なプロや実業団選手では、なかなかできないことだと思います。つまり、練習という位置づけのレースとはいえ、「仕上げたい」「負けたくない」「無様な走りを見せたくない」といった慎重な気持ちやプライドが邪魔して、多数のレースに出たくないと思うんです。

本:
ビジネス場面で置き換えると、「毎週、新規事業の企画を出す」みたいなイメージでしょうか。一般的には数週間くらいリサーチや案を練ってから企画を出さないとダメ出しされそうで嫌、みたいな。

折:
川内優輝選手しかできない挑戦であり、独自の信念を持ったGoing my way.で、大迫傑選手とは違う形ですが、プロフェッショナルだと感じます。

川内優輝選手が、今回のMGCでも大逃げを売って話題を作ったことで(話題を作るためだけではなく雨と低気温というご自身の得意な天候だったという冷静な読みもありつつ)、XなどのSNSや各種メディアも盛り上がりましたし。

レースで勝つことも大事だと思いますし、40キロ手前まで誰かの後ろについて脚を残してラストで勝つ、みたいなのは楽で戦略的かもしれませんが、面白くないですよね。

本:
そういえば、MGC関連のニュースを見ても、基本的には大迫選手と川内優輝選手の話題が中心ですね。

折:
1位と2位の選手はパリ五輪代表を獲得したものの、はっきりいうと「華」がないように感じてしまいます。

知名度は低くとも学生時代から実力はあり、着実に努力して力を向上させてこられたのだと思いますが、「優秀で真面目なサラリーマン」が、たまたま調子良くてMGCで勝ったというだけのような・・・

第三者の勝手な放言なのでご容赦いただきたいのですが、言えない・言わないだけで、実際は多くの人達が同じような感覚を持っているのではないかと思います。
(選手個人の方々に対して批判をしているわけではなく、全体構造を見るとそうではないかということ)

望む姿を手に入れるために、多少の変化・刺激・挑戦は必要

市民ランナーとしての追い込んだトレーニングと成長の話から、トップ・ランナーの話へと拡散しましたが、レベルは異なれど、成長する・自分が望む姿を手に入れるためには、フリーランスとしての自分への自戒も込めて、「居心地の良さ」や「自然体でやるばかり」「気楽に生きる」だけではできないことを改めて痛感しています。

ランナー話の最後に、福田譲選手という方の話を。

安定した環境の実業団選手(西鉄)から、プロランナー(NN Running Team)という困難な道に挑戦。YouTubeで活動を拝見していて、ウルトラマラソン、日本縦断プロジェクト、50km日本記録挑戦などなどをされ、「苦労・試行錯誤されているな」とは感じましたが、結果的に現段階では「成功」とならず、ひらまつ病院というチームに加入されることになっています。

人によっては、それは「失敗」や「それみたことか、力不足でしょ」と批評家的に論評するかと思いますが、現時点の結果はどうあれ、そのチャレンジは多くの人の心に残り、目に見えない福田譲選手の価値になっていると思います。

私も、他人が作った土俵で安穏と生活しながらでかい顔をするサラリーマン人生が嫌で、2018年に独立しました。
そう思いながらも、自分自身が大迫傑選手、川内優輝選手、そして福田譲選手のようなチャレンジができているかというと恥ずかしくなるので、自分自身への叱咤激励の意味も込めてコラムを執筆しました。

自己啓発的な意味合いではなく、市民ランナーとしての自分にとって辛い・緊張するトレーニングのように、ビジネス含めた人生全般で、自分なりのささやかでも挑戦をしていきたいと改めて思います。

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この記事を書いた人

折田ちなむ (chinamu oruta)のアバター 折田ちなむ (chinamu oruta) オルタナティビスト/人事領域コンサルタント

◆オルタナティビスト:既存の価値観や視点ではなく、「alternative(オルタナティブ)=別の生き方や見方」を探す人。
◆スタンス:「Unique,Ironical,Nature」をモットーに、「それ、みんなもおかしいと思ってない?!」という本音をアンチテーゼとして発信。
◆「折田ちなむ」とは:世に溢れかえる、ありきたりで横並びのSEOコンテンツではない、本音を発信するためのペンネーム(オルタナティブ→おるた)。
◆プロフィール:40代男性/家族(妻、息子2人)/人事領域のフリーランスコンサルタント(人材業界約15年、国家資格キャリアコンサルタント、2018年独立)/東京・神田にオフィス/某国立大学大学院修了/関東在住/人口3万人の海辺の田舎町出身/市民ランナー(サブ3目標)/読書・書評系Podcast運営

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