心惹かれる「オルタナティブな人」をご紹介していきます。1回目はコンテクストデザイナー・渡邉康太郎さんです。(聞き手:本体、話し手:折田ちなむ)
(本体:以下「本」)
渡邉康太郎さんは、J-WAVE「TAKRAM RADIO」のナビゲーターもされているんですよね。
(折田:以下「折」)
素敵な番組です。毎週木曜の深夜4~5時放送でリアルタイムでは聴けないため、Radikoで欠かさず拝聴しています。
その時間は、人生における至福の瞬間といっても過言ではございません。
本:
(べた褒めじゃないですか)いつもとコメントの雰囲気が違いますね。どんな部分にオルタナティビストとして惹かれるのですか?
折:
渡邉康太郎さんは「コンテクストデザイン」という本も出されていますが、その「コンテクストデザイン」という概念が魅力的で、まさにオルタナティブな視点を大事にされていると思うんですよ。
コンテクストデザインとは、以下のように書籍で定義されています。
“それに触れた1人ひとりから、それぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象を指す”(「コンテクストデザイン」p12)
ちょっと抽象度が高いので、「ん?どういうことだ?」となると思いますが、一言でいうと名もない普通の我々の「弱い文脈」(考え、想い、感情、気づきなど)を大事にしていきませんか?というスタンスだと理解しています。
本:
「弱い文脈(コンテクスト)」だから「コンテクスト」デザインなんですね。そうすると、きっと「強い文脈」も存在し、その「弱い文脈」を大事にする意味は何なのでしょうか?
折:
「強い文脈」は、例えば電機メーカーが作る製品、書籍や音楽、絵画、ダンス等の作品の作り手側のメッセージなどを指します。少し広げていくと、会社でいうなら経営陣の意思、学校だと先生の話す言葉、なども含まれると思います。
一般的に、人はこういった「強い文脈」を受けとると、「それが正解だ」とか「その通りに理解しないといけない」と思いがちだと思います。
けれど、コンテクストデザインの考えでは、「そうではなくて、受け手の1人ひとりの自由な解釈や読み解き=弱い文脈を世に出していきませんか?そちらのほうが、より豊かではないですか?」という発想だと理解しています。(これ自体も渡邉康太郎さんの強い文脈に対する、弱い文脈・誤読かもしれません)
本:
なるほどナルホド。「弱い文脈≒オルタナティブな視点」という構図ですね。
ちょっといじわるな質問になっちゃいますが、「弱い文脈」をなんでもOKだというと、雑音だらけやTwitterみたいな荒れる言論環境になりませんか?
折:
そのご指摘はまさにそうかもしれません。
論破や「エゴむき出しの主観」を良しとする人たちも一定以上いるので、そこは難しいところですよね。
そこは一朝一夕に世の中が変わることではないですし、達観したモノの言い方になりますが、私たちから見たら「偏った攻撃的な意見ばっかり言って・・・」という人たちもいないと、世の中成立しないのかもしれません。
かくいう私たちも、時と場合によっては非常に乱暴な考えを持ちますし、一般的には知識も見識もあるとされている政治・経済・軍事のエリートたちが世界中で現実的に戦争を行うのですから。
本:
思わず哲学・思想的な話に立ち入りすぎましたね。渡邉康太郎さんやTakramという会社についても少し教えていただけますか?
折:
渡邉康太郎さんは、1985年生まれ、慶応義塾大学出身です。ラジオでも話が出てきますが、香港やアテネなどでも教育を受け、ベルギーにも留学経験がおありです。
ちなみに、奥様は芥川賞作家の朝吹真理子さん。ピエール・ブルデュー(仏、哲学・社会学者)のいう、豊富な文化資本をお持ちだと思います。
創業期から入社されてディレクターを務めるTakramは、デザインイノベーションファームで、錚々たる国内外の企業のプロジェクトを担当されています。(メルカリ、タムロン、ビザスク、Jリーグなど)
プロジェクトページやメンバー紹介ページなどを見ていても、私とは階層が違いすぎて、「すごいな・・・かっこいいな・・・」しか感想が浮かびません。
ちなみに、渡邉康太郎さんが手がけたプロジェクトとしては、書籍にも記載がある以下のものをご紹介しておきますね。
・ISSEY MIYAKE 「FLORIOGRAPHY」
・一冊だけの本屋 「森岡書店」
本:
お話を聞いた肌触り感として、すごく視野が広いというか、様々なものを包摂するお方という印象を受けますね。書籍の「コンテクストデザイン」を読みたくなりました。
折:
書籍「コンテクストデザイン」は、実はAmazonでは購入できないのでご注意を。
青山ブックセンターのサイトから購入するか、イベントなどでの販売に限定されているようです。
本:
それを聞いて、歌手の森山直太朗さんのことを思い出しました。Apple musicやSpotifyなどのサブスク配信をせず、ライブなどに来られた方だけにCDとして販売する、そんな取組と共通項がありそうですね。
折:
「たくさん大量に販売する」ではなく、「本当に欲しい。必要だ」と思ってくれた方の元に届けたい、という共通項はありそうですね。
そういった取り組みにも、オルタナティブな視点を感じます。
ということで、ぜひぜひ渡邉康太郎さんがナビゲートする、J-WAVE「TAKRAM RADIO」、お聴きください!
豊かな文化資本を保有し、幅広い見識をお持ちであり、同時に自然体な語りにきっと心奪われることうけあいです。(上から目線や自慢話とは無縁です)